絵に描いた餅

書かなきゃ忘れるオタクの備忘録

演劇「R&J(알앤제이)」 感想

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【2019.07.13 マチネ】

学生1: キ・セジュン

学生2: カン・チャン

学生3: カン・ギドゥン

学生4: オ・ジョンテク

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【2019.08.10 マチネ】

学生1: チ・イルジュ

学生2: カン・ヨンソク

学生3: ソン・ユドン

学生4: ソン・グァンイル

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【2019.08.11 マチネ】

学生1: キ・セジュン

学生2: ホン・スンアン

学生3: カン・ギドゥン

学生4: ソン・グァンイル

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【2019.08.17 ソワレ】

学生1: キ・セジュン

学生2: カン・ヨンソク

学生3: ソン・ユドン

学生4: ソン・グァンイル

 

 

久しぶりに韓国で演劇を観ました。思い返せばスルースやデストラップぶりのような気がします。

ロッキーホラーショーの開演時間(14:00)を間違える、という阿保なことをやらかしてどうにか開演に間に合いそうな劇場に飛び込んだ結果観ることになったのがこのR&Jでした。

予習どころか当日のキャストさえ知らないままチケットを購入。「おっ、割と良い席空いてるやん」と何も考えずに買ったのがステージシートで、そのことに気づいてから開演まで「ステージシートってなんなん!!!えっ………座布団持ってけ……?えっ、どういう席なん。生きて帰れる???」と打ち震えていました。打ち震えていたといえば、インターミッション有りの2幕もの、と壁に貼ってあるのを見た時も震えました。演劇で2幕ものとか絶対集中力続かない自信がある。

キャストも正直馴染みのない方ばっかやし………セジュンさんとか猫ちゃんしか知らんわ!!!(誇大表現)と正直不安要素しか見つからないなか「まあ、要はロミジュリやろ!!イケるイケる!!」と自らを鼓舞し席に着いたのを覚えてます。ロミジュリ自体はバレエ演目の中でも大好きなやつだし、宝塚でも星組公演は私のバイブルだし、ついていけないことはないかなと。

結果的に劇場を出た瞬間次の観劇予定を決める為にキャストスケジュールを開きました。ものすごく好みの作品でした。

 

以下ざっくりとした感想です。

相変わらず私の韓国語力がさっぱりなのと、今回は上記のような経緯で観劇に至ったこともありツイッターのタイムライン上で目にするもの以外、人様が書かれた感想やあらすじ等を一切拝見していないので頓珍漢なことを書いている可能性があります。その点を踏まえて読んで頂けると幸いです。

くだらない話ですが、私がどうしても渡韓できない期間にあった昨年(初演)の公演の話題をできれば目に入れたくないという気持ちからなかなか人様の感想を拝見できなくて…(笑)シェイクスピア風に言うなら緑の目をした怪物に心を餌食にされちゃいそう。まあそう言いつつ、しばらくR&Jが観られない日が続くと、多分猛然と人様の感想を検索することになると思います←

 

【あらすじ】

厳格な規律が幾つもあるカトリックの男子校に在学中の四人の少年たちは、夜遅く寮をこっそり抜け出して秘密の場所へと向かう。彼らは赤い布で包まれた禁断の本、「ロミオとジュリエット」を広げて朗読を始め、その話に徐々に惹かれていく。学校の規律を破りロールプレイを続ける少年たちは、次第に戯曲の人物の生活を通して自分たちの生活を投影し、自らを取り巻くタブーと抑圧の壁に遭遇します。冷静な現実の始まりを知らせる授業の鐘が鳴るまで、彼らはまるで真夏の夜の夢を見るように自ら創造した「ロミオとジュリエット」の結末に向かって走って行く。(synopsisより)

 

【感想】

ぱっとインターパークの公演サイトやあらすじを見ただけではどういう内容なのかさっぱりわからないけど、「ロミオとジュリエット」という謂わば使い古された題材の割に評判は良い、というのが観劇前の認識でした。まあ男性4人だけの舞台で「その中でロミジュリを演じる(つまりジュリエットも男性が演じる)」というのは、好きな人は好きそうだしそういう部分で人気があるのかな、と。

全然違いました。

もう全力で謝罪したい。なんなら、宣材写真(赤い布と一緒に撮ってるやつ)を「古の同人便箋みたいな構図」って言っていたこともついでに謝罪させてほしい。どこに向けて謝罪したら良いのかわからないのでとりあえずこの場で謝罪させていただきます。申し訳ありませんでした。

話を戻します。観劇してわかったのはこの作品の主題が、「少年たちがロミオとジュリエットの戯曲を演じること」ではなく「少年たちがロミオとジュリエットの戯曲を通して何を知っていくのか、何に目覚めていくのか」だということです。厳格なカトリックの学校で生活する彼らが、戯曲を通して今まで知らなかった感情(例えば障害を乗り越えることだったり、愛だったり、身を引き裂かれるような悲しみだったり)を知っていく過程がとても「おもしろい」と感じさせられるのだろうと思いました。

私がこの作品に惹かれた1番大きな部分は作品全体を覆う「空気感」です。息がつまるような閉塞的な世界の中で、それに抗おうとする少年たち。その刹那の時間の美しさと儚さが台本を含め舞台セットや音楽に至るまで完璧に表現されていて、一度見たらあとを引き、また観たいと思わせられるのです。

これはあくまで私の妄想であり戯言ですが、彼らには学校を卒業後何事もなかったかのように過ごし、次第に疎遠になっていてほしいです(※あくまで私の妄想です。しつこいようですが念のため)そのまま何十年も経った頃、ふと真夜中に見上げた空に光る稲妻を見て『真夏の夜の夢』のようなあの夜のことを思い出すけどその時の彼らにとってそれはもう過ぎ去った過去の一つ………みたいな!

学生4人の抱える感情(シノプシスから引用すると"自らを取り巻くタブーと抑圧の壁")というのは謂わば思春期特有のものじゃないですか。あの夜、答えを探し激しい感情に身を焦がしたとしても大人になってみればなんてことないものかもしれない。そもそも、思春期の彼らにはこれからも次々に衝動や障害にぶつかるだろうしめまぐるしい日常にあっという間にこの夜のことを忘れてしまうような気がします。これは朝と同時に学生1以外があっさりと現実に戻ろうとしたことからも考えられるんですが……。そう考えると目の前で演じられる学生たちの『真夏の夜の夢』が如何に脆いものなのかかが窺われて、ますます魅了されちゃうんですよね。

 

【各学生について】

学生1

ロミオとジュリエットの戯曲を演じるきっかけともなる学生1(ですよね?)セジュンさんとイルジュさんの2人を観ましたが未だに彼のことがよくわからないんですよね……(よって、ろくな感想が書けない)

愛について単純な知識と想像以上のことを知らなかった彼が、ロミオを通して愛とは何かを知っていく、その過程が学生1役の見どころであり魅力なんだろうなとはわかります。そして役割的には他の3人を引っ張っていくタイプなのかな、とも思うんですがそういうカリスマ感?というかリーダー感?が押し出されているわけでもないし……と首を傾げています。あっ、でもイルジュさんの学生1はすこしリーダーシップを感じたような気がします。ヨンソクさんの学生2と並ぶとちびまる子ちゃんの大野くんと杉山くん感がありました。なんていうか、この2人の組み合わせはニコイチ感があったとも言えます。常に学生1と学生2が(これはロミオとジュリエットしかりロミオとベンヴォーリオしかり)同じ温度で向き合っていたように感じました。セジュンさんとヨンソクさんの組み合わせだとひたすらに苦しそうな学生2に対し、学生1が向き合っていたのは学生2(ジュリエット)ではなく「愛」だったように感じたんですよね。朝になり現実に戻る時も、セジュンさんの学生1は本当に夢から目覚めたようなふっとした表情をしていてニコイチ感とは真逆の隔たりを感じました。

 

学生2

私が1番注目して観ている役です。彼は4人の中だと1番穏やかで柔和な性格なんだと思います。だから気がついたらジュリエット役にされてるし、ノリ気じゃなくても断りはしない。そして1番冷静に状況を見られる子でもあると思うんです。ロミオとジュリエットの物語において、ジュリエットは非常に性急で短絡的で行動力があるキャラクターとして書かれています(出会ってすぐに結婚、仮死状態になる薬を飲むなど)そんなジュリエットを寮を抜け出すことすら躊躇っていた学生2が演じる、というのは面白いなと思います。

これは私の解釈ではありますが、この作品が「少年たちが今まで知らなかったことを知っていく物語」と考えると本人の性格とは反対のジュリエットを演じた学生2が、4人の中で1番変化があったんじゃないのかと考えてしまうのです。ヨンソクさんの学生2の感情の振れ幅がこの作品を観た中で1番心に残っているんですが(これは単に私がヨンソクさんの学生2のみ2回観ていて理解しやすかったというのもあります)、ロミオと出会い恋に落ちてからのヨンソクジュリエットは「辛そう」という印象が強かったです。自分にはない、知らなかった、ジュリエットの情熱的な恋心とそれが引き裂かれる運命だという事実を知って、初めて知る感情が彼にとってとても辛いことだったんだろうと思いました。このあたりスンアンさんの学生2は「戸惑い」の感情の方が大きかったように感じます。カンチャンさんの学生2に関しては初日から日も経っていなかった7月上旬に観たのみなのであまり私が感想を言っていいものでもないよなと思っちゃうんですが、観た当時感じたのは「全てを受け入れている」学生2という印象です。聖母のようなジュリエットだなと感じたことを覚えています。

 

学生3

学生1同様、学生3のこともいまいち理解しきれていません。というか、正直学生2を観るのに忙しくて他の学生を自分なりに解釈して観るに至れませんでした。圧倒的に観劇回数が足りない……(泣)

ただ、ギドゥンさんの学生3を思い返してみると少しは自分なりに理解できそうな気がしたので書き出してみます。ギドゥンさんの学生3で印象に残っているのが感情の振り幅が大きいというか、よく泣いているなという部分です。よく泣いている、というとヨンソクさんのジュリエットもそうですが、ジュリエットの身を引き裂かれるような辛さの涙ではなくギドゥンさんの学生3は戯曲を演じる友人達を見て舞台の端で泣いているんです。1番忘れられないのはジュリエットに薬を渡す時に学生3の演じる神父様がずっと泣いていたことです。ストーリー上神父様がこのシーンでこんなにも泣くことはない、つまりこの涙は純粋に学生3の悲しみややるせなさだと考えられます。そう考えると学生3は他の学生に比べて感情移入しやすいタイプではないかと思うわけです。それであれば結婚式やジュリエットの折檻シーンでの行為も納得ができるんですよね。「ロミオとジュリエットを引き裂く存在」に感情移入というか、のめり込んでしまったんだろうと思います。何よりギドゥンさんの学生3は自分のやってしまった行為に気づいた後、自分でも信じられないように震える手を見つめる姿が印象的なのであながち間違ってはいないのかな、と。

学生3の行き過ぎた行為に関してもう一つ考えたのが、現実世界の抑圧に対する解放です。学生3は最初に体罰を受けているシーンがあります。それと対比するようにロミオとジュリエットの戯曲の中(夢の中)では他人に手をあげるという行動が出たのかなと。本人も自分の行動に動揺しているので意識的にやった訳ではないけれど、現実世界の抑圧からの解放を主張する手段として体罰を受けていた学生3は「他人に手をあげる」という形になったのかなと思うわけです。ただ、この考え方だと「奪った本を破り捨てる」という暴力ではないけれど、いささか"やり過ぎ"な行為に対して説明がつかないので前者の考えの方がしっくりくるような気がします。

ただ単純に解釈がしやすい、という点でギドゥンさんの学生3にフォーカスして語ってしまいましたがユドンさんの学生3もとても良かったです。どちらも違ってどちらも魅力的な学生3なので片方の学生3を観るともう片方の学生3が観たくなるという由々しき事態が発生します。「いつ行ってもどちらかが観られるからキャストスケジュール気にしなくていいやラッキー」って感じじゃないんです!どっちも観たい!等しく観たい!片方を観た時にはもう片方のことを考えてしまう。私はこれをR&Jの永久機関と呼んでいます。

 

学生4

学生4については学生1、3以上にわかりません。4回しか観られてないのに全員を語れるくらいじっくり観るなんて無理です。観劇回数が圧倒的に(以下略)あと、学生2のスケジュールに合わせて観劇日を決めていたので初回の7月以外全てグァンイルさんで観ておりWキャストの演技を観比べて、ってこともできない。

乳母役とか凄い良かった気がするのにどうしてあんまり覚えてないんだろう…?と思ったら乳母って大概ジュリエットと一緒ですもんね。そりゃジュリエットを観るのに忙しいから記憶が曖昧なわけです。

かろうじて記憶に残っているのがギドゥンさんとグァンイルさんの組み合わせだった日です。前回アップした分でも書いたんですが、ギドゥンさんとグァンイルさん、立ち姿が割と似てるじゃないですか。キャピュレット夫人と乳母でジュリエットをうりうりするシーンのシンクロ具合が神がかっています。どう見ても「不思議の国のアリス」のトゥイードル・ディーとトゥイードル・ダム。もはやジュリエットがアリスに見えてくるレベルです。

上記みたいなことは覚えているんですが、結局学生4がどういうタイプの少年なのかについて考えられるまでには至りませんでした。(地元から仁川への飛行機が飛んでいれば)あと何回かは観たいと思っているのでその時考えられればいいなと思っています。

 

【座席別感想】

ステージシート後方列下手寄り

この席は舞台上のキャストの表情が肉眼で見える距離ながら俯瞰して観られるのが魅力だと思います。そして学生2が見やすい(ような気がする)最初のキスシーンでも、初夜のシーンでもジュリエットの表情がよく見えます。あと座席中央部分での演技も観やすいのがポイント高いです。

下手中央列S席

私の座った席はギリギリ表情まで見えるかな、といった感じでした。これ以上後ろだと私の視力じゃ駄目そうです。この位置は学生3が見やすい印象でした。バルコニーシーンが見にくいかも、と心配していましたが思ったよりは見にくくなかったです。

センター中央列R席

見やすいし、当然ですがステージシートからは見えなかった部分が見えて新鮮でした。

 

4回中3回は当日券で買っています。個人的にはステージシートの後方列の席が1番好きでした。3列目くらいまでの前方席、座席中央舞台より後方の席、あと上手サイドの席には座ったことがないので気になるんですがどこが1番観やすいんですかね。

 

【2019.08.17 ソワレ 感想】

この回は10日の公演の幕間に秒速でキャストスケジュールを開き観劇を決めた日でした。ヨンソクさんの学生2が観られればいつでもよかったんですが、予定が空いているのがここしかなく5日間くらいインターパークに張り付いていましたwかろうじて記憶が残っているのと、この回でやっと少しは理解ができるようになったので印象に残っている部分の覚書です(時系列はぐちゃぐちゃ)

 

  • ジュリエットのドレスがめちゃくちゃでしたwユドンさんとヨンソクさんの組み合わせだとドレスを着てボックスに立つ時、両足でぴょんと飛び乗るのが可愛い(他の組み合わせがどうなのかは観てないので知らん)
  • ヨンソクさんの学生2はロミオと恋に落ちてから両手で顔を覆うことが多い印象なんですが、ジュリエットの感情を咀嚼して自分の中の感情と整理つけているのかなって
  • ロミオがジュリエットに導かれてボックスを踏み越える演出に初めて気づきました。その時ロミオ(もしくは学生1)は一線を越えたんだなとわかるんですね……
  • あまりにも今更なんですが、だんだんと制服を脱ぎ捨てていくのって抑圧からの解放を表現しているのかって今気がつきました
  • 本を奪われて愛を誓う言葉を失ったロミオが詩を諳んじ始めた時、初めて彼は「愛とは」の答えを知ったんだなとスッと理解できました
  • ロミオが神父さまに結婚をしたいと言いに行っているシーンで舞台の隅に居た学生2が幸せそうな、照れたような表情で腕に顔を埋めていたのが世界一可愛かった。もう一回言っておきます。世界一可愛かった。結婚の許しを得た時にガッツポーズしていたのも可愛い
  • 寝ている乳母から真ん中の椅子を抜いた後、さらに両足で左右の椅子までスライドされてたけどこれマッコンにはどうなっちゃうんですか?
  • ベンヴォーリオがものすごくかっこいいことに気がつきました。ヨンソクさんの学生2自体が"みんなと仲の良い柔和な優等生"というイメージなので仲裁したりというのが似合うのかもしれない
  • 戯曲を続けるように学生3と学生4に懇願するジュリエットが観ていられないほど悲痛でした。嗚咽しながら母と乳母を呼び続けるジュリエット……。どんなに悲しい場面でもどこか美しさがあるこの演劇において、1番絶望的なのがこのシーンだと思う
  • ヨンソクジュリエットの毒を煽り倒れこむまでの一連のシーンは芸術だと思う。なんていうか、「一瞬が永遠のように思える」という文章を形にしたらこんな風になるんだろうなって感じ
  • 学生1が始めた夢の幕引きが学生2の手で成されるってむっちゃエモい
  • この回、朝になって現実に戻る時学生1が制服を纏い始めるのめちゃくちゃ遅くなかったですか……?なかなか夢から覚めきらないというか……セジュンさんの学生1も本当に夢から覚めたような顔をしていたので「어젯밤에 꿈을 꿨어」の台詞の時、ああ彼は本当にこの夜のことを夢にしてしまったんだ、と感じました。戯曲を演じていた時のヨンソクさんの学生2はあまりにも激しくて辛そうだったのに、それをあっさりと夢にしてしまった学生1との隔たりがすごい
  • 本編には関係ないけど学生1のライトが点かなくなった時、ごく自然に学生4のグァンイルさんが自分のと交換していたのチームワークがすごいなって思いました。些細なことだけど目の前で見ると感動しちゃう

 

 

軽い気持ち観に行ったはずが、気がついたら学生1のジョンボクさん以外全キャストコンプしておりました。自分でもどうしてこうなったのか………という感じです。しかもまだまだ観たりない!!あと一ヶ月公演期間があるのでどうにかして学生2キャスト3人をもう一回ずつは観られたらいいなと思います。私が行ける日程で飛行機が飛んでいますように………。

 

ところで超〜〜〜〜〜〜余談なんですが、この作品を観て赤染晶子の「乙女の密告」を思い出した方いませんか………?私だけ………?