絵に描いた餅

書かなきゃ忘れるオタクの備忘録

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』感想

f:id:e_nikaitamochi:20230312172039j:image

私の中で一体どこの層が観ているのか全くもって謎と話題の舞台、それが呪いの子でした。

広告がバンバン打たれチケットは売れているらしい。しかし周りで観に行ったという人は殆どおらず、舞台オタクで構成されているはずのツイッターのTLですらその話題を殆ど見ない。一体誰が観てるんだ……。

私がツイ廃生活を送っているなかで辛うじて知っている情報といえば、推しがロングラン作品に拘束されるのではと怯えるホリプロ所属俳優推しのオタク達のざわめきと『ハリポタを日本人が演じるとかムリ~~(笑)』とかいう一生舞台観劇に縁の無さそうな人々のざわめきくらい。マジで一体どこの層が観てるんだ……。

チケットも一般的な舞台チケットの相場を超えた価格設定で、舞台オタクが『気になるから観に行きま~す!』するにはちょっとハードルが高い気がする(この値段出すなら推しが出てる別作品を一回でも多くみたいと思わせる絶妙なラインだと思う)し、かといって普段舞台観ない方が友人などと『観に行ってみよ!』するにはやっぱりハードルが高いと思うし、ご家族が『子供と一緒に観に行こう』をするにもちょっと……いや、かなりハードルが高い気がする。

いや本当に、一体どこの層が(以下略)

という感覚で呪いの子については遠巻きに眺めていたのですが、色々あって突然ゴールデンスニッチチケットが舞い込んできたのて急遽観に行くことになりました。

正直観劇続きになってしまう日程だったのであまり乗り気じゃなかったんですが、信頼している友人が『面白かった、観て欲しい』と会う度に言っていたのでとりあえず行くかと決済しました(ゴールデンスニッチチケットは当選から決済まで24時間も無いという鬼畜仕様)

 

 

私自身のハリポタ理解度といえば、おそらく人並みです。

11歳の頃はもしかしたら明日にもふくろう便が入学許可証を携え飛んできて──と夢を見たりもしましたが、ガッツリストーリに触れたのは死の秘宝(映画)が公開された時が最後だと思います。多分観に行っていたはず。

ハリポタシリーズ自体はモロ世代なので、一応原作は小学生の時から新刊が発売されるのを楽しみに読んでいました。しかし大人になってから読み返したりということもなく、あまりにも遠い記憶すぎるので正直なんにも覚えている自信がない。小学生の時に読んだ本の内容とか覚えてる訳がないんすよ。

呪いの子(戯曲)の発売当初は忙しく、もう魔法学校に夢見る歳でもなくなっていたためいつか読まなきゃと思いつつもそのままでした。

一応ファンタビは毎回楽しみに観に行っているけれど、あれはまあ今回関係ないですね。

ということで、炎のゴブレットまでしか読んでません!と自信満々に言う母と二人、ネットで聞き齧った『既存シリーズを履修してなくても大丈夫』という情報を鵜呑みにしていそいそと赤坂へ向かいました。

 

流石に何にも知らないまま観るのはヤバいと思い、行きの電車の中(遅い)で公式HPのあらすじをチェック。なるほど、ハリーの息子とドラコの息子が二人で奮闘する話らしい。想像を膨らませるに、授業中対立し問題を起こした二人に教師から罰として使ってない教室の掃除だとかどっかへのおつかいを頼まれるに違いない。そこで何かを見つけるだとか事件に巻き込まれるだとかで窮地に陥る。常日頃親同士の確執もあって対立しがちな二人だが、力を合わせて窮地を脱し、「お前、なかなかやるな」「お前もな」とちょっとだけお互いを認め合う関係になって The End. 大方こんな感じであろう。

呪いの子を猛プッシュしていた友達に「面白いの?」と聞いたら「面白かったよ」と答え少し口籠もった後「……なんか思ってる以上にめちゃくちゃ萌えると思う」と付け加えていたのは、私が反目する2人組に萌えがちだとよく知っているからだと予想。

 

実際に観劇してみての率直な感想は

  • 舞台装置、演出が派手で楽しい
  • 物語のテーマに一貫性があってわかりやすい
  • 上質な二次創作だぁ……
  • 反目どころか共依存関係じゃん……?!

という感じで、期待値をはるかに上回る感動と興奮を味わいました。

 

まず最初に舞台装置や演出ですが、魔法の演出が矢継ぎ早に繰り広げられ華やかで観ていて飽きなかったです。

観に行く人間がどれだけ"魔法の世界"に期待値を抱いているかによって感じ方は変わると思いますが、普通にいつも通り舞台を観に行く感覚で向かった私は『魔法だぁ……!!』とキャッキャしていました。友人が『千と千尋も楽しかったけど、あれより金がかかってる感じ』と評していましたが本当にその通りだと思います。

ファンタジックな部分について、千と千尋が『舞台版ですので舞台としての演出でこちらのシーンはこのように再現させていただきます』という風に見せられていたのだとしたら、呪いの子は『限りなくリアルに寄せました。映像版と同じものをどうぞ!(バーン)』と言った風に見せていたなという印象です。

それにしてもこまごまとした魔法に加え、湖のシーンはガチで水(プール)をお出ししてきてびっくりしました。それまでは魔法にかけられたように素直に楽しんでいたけれども、ここまでされるとすっごいけど大変だなぁ…と言う気持ちになってこなくもない。びしょ濡れになった後、すっかり元通りの姿で次のシーンで出てくるまでの労力にうっかり想いを馳せてしまうもん……。

個人的に一番好きだったのはディメンターが出てくるシーンでした。

これがリアルディメンター……と思わせられるだけの迫力がある演出で思い出すと今でもワクワクします。

 

前述の通り、戯曲は未読の状態で劇場に向かいましたが"親と子の関係性"というテーマを主軸に話が進められ、綺麗にまとめられているので初見でもスッと理解ができました。

序盤のアルバスが「僕がセドリックを取り戻す!」などと言い始めた時には『なーーーに言ってたんだ?この子は……』とあまりの突拍子もない展開に舞台作品にありがちトンチキご都合主義展開かと身構えましたが、話が進んでいきアルバスの置かれた境遇を理解してくるにつれ段々とその行動も理解できてくるんですよね。

家族で唯一グリフィンドールではない彼が、自分もポッター家の人間だと証明するには何かを成し遂げるしかないのだと思ってしまうのも理解できるし、父親と上手くいっていないアルバスが一途に息子のことを想い続ける父親という図を目の当たりにしてそれを救いたいと行動を起こしてしまう気持ちも納得ができてしまう。

劇中で描かれる様々な親子──アルバスやスコーピウスは勿論、セドリックやハリーといったキャラクターの親との関係性や情や絆が、要所要所での行動のキーとなりそれぞれがきちんと物語に紐付いていて、よく出来ているなぁと感動しました。

観終わってみると、『呪いの子』というタイトルもめちゃくちゃ趣深いことに気付かされます。

 

呪いの子はもちろん二次創作なんかではなく純然たる公式の物語で、正しくはハリーポッターシリーズのスピンオフと言える位置付けであることは重々承知しております。そのうえで私は始終『上質な二次創作だ……』と思いながら観ていました。

だって原典となる作品(つまりは私が思春期に夢中で読んでいたハリーポッターシリーズ)を踏まえて観ると途端に爆エモになるシーンがそこかしこにある訳で、長い時間(これは現実世界でも作品の中の世界でも)をかけて完結した物語の中の幾つものエピソードの上に成り立つ種類の"エモ"だったり"萌え"というものは二次創作以外では普段なかなかお目にかかれなくないですか?

私は一番最初のアルバスとスコーピウスの出会いのシーンからそういった萌えとエモで気が狂いそうになっていました。

ホグワーツ急行のコンパートメントから始まる出会いなんて、否が応でもハリーポッターシリーズの始まりを思い出させるし、ハリーがそこで出会った友人とどれほど得難い友情と絆を築いていくのかを我々はよく知っている訳です。きっとアルバスにとってもそんな出会いがあるのだろうとワクワクしながら観ていれば、彼が同じコンパートメントに座ったのはあの!ドラコの息子!!嘘だろ!!!

ハリーにとってのロンとハリーとってのドラコって割と対極の位置に居たと思っているんですが、ハリーがロンに出会った場所で同じように息子のアルバスが得た親友がドラコの息子のスコーピウスというのはもうこれだけで楽しくなってくる。

彼らの父親たちが繰り広げたギスギス対立エピソードの数々を思い出せば思い出すほど謎に胸のときめきが高まっていくこの仕様、すごいよ。

開幕初っ端から【舞台上から得られる情報量】×【幾重にも積み重ねられた過去のエピソードから得られる情報量】の解が、萌えの二乗エモの三乗みたいなトンデモ結果になってくるのをしっかり教え込んでくれるので、序盤から頭の中で持ち得るハリポタ知識を総ざらいしながら次の展開が気になってしょうがない!次はどんな萌え&エモ&新情報をくれるんだ!と心は前のめり状態でした。

でもまあ、既存のハリーポッターシリーズを踏まえると萌えが何乗にもなって膨らむシリーズ最大の案件はもしかしたらスコーピウス本人かもなぁという気がします。

どこからどう見ても完璧にマルフォイ家を象徴する容姿をしていながら、中身があれって色々な意味で卑怯すぎる……。オタクはギャップに弱いんだ。

 

【雑感】

一つの作品として呪いの子を見た時、既存のハリーポッターシリーズから想像するような『魔法と戦闘が入り乱れる冒険譚』というよりは『魔法学校版トーマの心臓』といった要素の方が強いなと感じました。

"呪いの子"と言うタイトルどおり、親と子の情と絆だったり出自故に孤立している少年達の友情だったりと人と人との関係性に焦点を当てとても丁寧に描いている。

繊細な年頃の少年たちが周りとの距離感に悩みながらアイデンティティを確立していく話ってどうしてもギムナジウムものを思い出しちゃうので、私には冒険譚というよりはトーマの心臓に見えました。

"人と人との関係性"をメインに描いていながらも、少年たちの果敢で少しばかり無謀な冒険や魔法を使った派手な戦闘シーンといった既存のハリポタシリーズお馴染みの見どころもしっかりあり、非常にバランスの良い1から10まで楽しませてくれる舞台だったなという感想です。

観劇前に戯曲を読んでいくべきかどうか、私は自身がそうだったというのもありますが現時点で読んでいないのであれば慌てて履修する必要もないんじゃないかなと思います。

全く知らない展開と新情報と萌えとエモと魔法が目の前で次から次へと降ってくる体験は一度しかできないので自分がどのように舞台を楽しみたいかで選べぶのがベストなんじゃないかなと。ただただ目当ての役者さんが居るとか1回の観劇で隅から隅まで味わい尽くしたいとかであればあらかじめ脚本を頭にいれておく方が良いだろうとも思うので。

ただこれだけは言えます。

既存のハリーポッターシリーズは絶対に履修しておいた方がいい。

"履修していなくても楽しめる"

これは本当にそうだと思います。だって純粋に作品自体が良いもん。

『親と子の関係性』という普遍的なテーマを主軸に進められるストーリーと派手で凝った演出。理解しやすいうえに幅広い層の心を掴む要素がモリモリなので、当然履修していなくても楽しめる。

しかし、履修していればその100倍は楽しめます。理由は上記のとおり。一つのシーンから得られる情報量が桁違いになるからです。

私のように『一応履修してるけど……』という人も観劇前にざっと復習しておくことをお勧めします。私は誰かの名前が出てくる度に『……???(誰だっけ?)』となっていました。この時に出てきたこれしてた人!と言われたらわかるのですが、突然名前だけ出てきてもぱっと思い出せないまま話が進んでいくのでめちゃめちゃ疲れます。

最低限、炎のゴブレットまでは履修しておけばだいぶ楽になる気がします。

 

【チケットの話】

今回ゴールデンスニッチチケットで観劇しましたが座席は1階中列サイドブロックの席連番でした。

チケットは当日劇場窓口引き換えですが、すっかり韓国の劇場と劇団四季QRチケットに染まり紙チケ管理ができなくなってしまった人間なのでこれも非常に楽で良かったです。

N◯Sの学生チケットのように当日先着順に座席が決まるという仕様でなかったのも気が楽でした。

更にデザインチケットなのも嬉しい。余談ですがこのデザインチケット、劇場の向かいにあるハリーポッターカフェで一部のメニューを注文すると貰えるペーパーと並べるとめちゃくちゃ可愛いです。映えます。

ゴールデンスニッチチケット、豪運じゃなきゃ買えないということ以外良いところしかないかもしれない。

 

もともと、私はこの舞台を観に行くつもりは殆どありませんでした。

前述の通りハリポタモロ世代人間なので気になってはいたんですが、キャスト・チケット代等々総合して考えると「残念だけど……」のライン。

たまに連番する仲の友人とも開幕前に「行く気ある?」「観たいけどちょっとチケ代が……」「だよねぇ……」という会話をしていました。だいたい友人誘って連番して結果おもんなかったら友情崩壊レベルの価格帯ですし。友情崩壊までは至らなくても今後二度と連番誘えなくなると思う。

これくらいの熱量の人間に優しいのがこのゴールデンスニッチチケットだなと思いました。5000円ならぶっちゃけ席がどこでもキャストが誰でも気にならないので気が楽です。今回は母を誘いましたが友人を誘ってたとえおもんなくても友情崩壊まではいかないでしょう。

  • 気楽に行ける
  • 友人、知人を誘いやすい

この2点は新規客を得るのにめちゃくちゃ効果がありそうで良いなぁと思いました。

ちなみに私は、値段相応に良いものだということがわかったし、安く観せてもらったのでじゃあいっちょチケッティング頑張って定価でチケット買いますか!これがゴールデンスニッチチケットのやり口かぁ〜〜となったんですが、次のチケットオープン時私が1番重要視していたアルバスとスコーピウスのキャストが出ていなかったので購入を諦めました。悲しい……。1回くらいセンブロかぶりつきで観てみたかった。

恥ずかしながらケチくさいオタクなので、この価格はキャストと座席位置めちゃくちゃ吟味して納得できなきゃ買えないなぁと。てかほぼ主役と言ってよい役のキャストを出さないでチケットオープンって本当に一体どこの層にチケットを売ってるんだろうとますます謎が深まりました。

こんなオタクが疲弊しそうな売り方ってことは従来の舞台オタク(リピ上等人種)はやっぱりターゲットじゃないんだろうなとか。

 

以上、取り留めのない感想になりましたが個人的な評価としてはとても良い舞台だったなと思いました。確実に閉幕までにあと何回かはリピすると思います。

作品を通して何度も何度も出てきた、アルバスとスコーピウスとの『僕が1番大切に思っているのは君だよ』という意味の言葉の応酬がとても綺麗だったのでこのあたりの台詞ついて自分の感じたことを言葉にしてまとめたかったのですが、長ったらしくなりそうなので別で書いておこうと思います。書けるかは知らんけど。

照れも衒いもなく必要な時に自分の気持ちをはっきり言葉にできるスコーピウスくんの性格形成についてゆっくり考えたい。彼、喧嘩して怒る時まで言葉選びが綺麗で優しくて衝撃を受けたんですよね。一体どうしたらあんな可愛い子が生まれるんだ……。